第13回 B型肝炎ウイルス(HBV)の悩ましさ 

第13回 B型肝炎ウイルス(HBV)の悩ましさ 

2020.1.01 update.

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近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
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公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著に『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』がある。
日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』

 

| 性行為で感染する病気(STD/I)はワクチンで予防を

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

 

テーマ●B型肝炎ウイルス(HBV)をコントロールできるか

 

前回は、B型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)の違いについて解説しました。

HCVに関しては、近年効果が非常に高い薬が複数現れて、95%以上の割合で駆除することが可能になってきました。

 

しかし、HBVの場合はいったん感染すると、肝細胞の遺伝子に組み込まれてしまうので、駆除は原則的にできません

ですので、ワクチン接種により、感染を未然に防ぐということが重要になります。

 

以前から、母児間の垂直感染を防ぐために、母親がHBV陽性の場合、新生児にグロブリン投与とワクチン接種が行われてきました。

これによって垂直感染は激減しましたが、例外的にすり抜けるケースがあり、HBV感染はゼロにはなりませんでした。

また、まれながら子ども同士の水平感染(現時点で原因不明)もあることがわかっています。

 

こういった状況を踏まえて、2016年からHBワクチンは定期接種となり、母親の感染状況に関わらず、全新生児がワクチン接種の対象となりました。

ワクチン接種により約95%の人が抗体を獲得し、効果は20年以上続くと報告されています(国立感染症研究所)。

これでHBVも駆逐される……と思うかもしれませんが、そこは一筋縄ではいかないHBVです。HCVやピロリ菌のようにはいきません。

 

まず、ワクチン接種をしても約5%の人は抗体が獲得できないのです。

親族にHBV感染者がいれば話は別ですが、いない場合は抗体が獲得できたか確認したり、獲得できるまで接種を繰り返したりすることはまずないでしょう。抗体が未獲得のままになると予想されます。

 

また、ワクチンというものに対して拒否反応を示す保護者も一定数いるので、定期接種であっても、そもそも接種しないというケースがあります。

 

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梅毒や淋病が世の中から決して駆逐されていないように、性行為感染症(STD/I)はコントロールが難しいのです。

これは、ヒトパピローマウイルス(HPV)もまったく同様です。HPVについては、次回、詳しく解説します。

 

さて最後に、医療者にとってHBVの一番身近な問題は、「針刺し事故」でしょう。

針刺し事故ではHBV、HCV、HIVなどの感染が起こりえますが、頻度としてはHBVが最多です。

特にHBVの場合、一部は急性肝不全(劇症肝炎)となって命の危険性もあります。

 

針刺し事故を防ぐためには、針刺しを防止する構造になっている針を使う、リキャップはしない、針を回収するボックスをすぐそばに置く、などの対処が重要です。いくら経験を積んでも、針の取り扱いには常に十分な注意を払いましょう。

 

医療者なので、もちろん事前にHBVワクチンの接種は必須です。

そして万が一、針刺し事故を起こしたら、決してうやむやにせず、速やかに上司に報告しましょう。

対策マニュアルに則って、感染症や抗体のチェック、場合によってはグロブリン投与、ワクチン接種などを行ってください。

 

(了・次回へ続く

 

[医学書院の《がん看護実践ガイドシリーズ]

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