第10回 生活習慣と発がんのメカニズム

第10回 生活習慣と発がんのメカニズム

2019.11.15 update.

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近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
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公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著に『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』がある。
日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』

 

| 発がんを引き起こすものとは

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

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テーマ●遺伝子異常を引き起こす5つの要因

 

本連載の7・8・9回目までは、がんが生じる本質的な原因は、遺伝子異常なのだということを解説しました。

では、その遺伝子異常を引き起こす原因には、どんなものがあるのでしょうか?

 

大きく下記の5つに分けられます。

 

①生活習慣:タバコやアルコール、食事の偏り、運動不足、肥満など

②感染症:ヘリコバクター・ピロリやB型・C型肝炎ウイルス、パピローマウイルスなど

③性ホルモン:閉経後に女性ホルモンを投与すると、乳がん、子宮体がん、卵巣がんのリスクを上げる

④化学物質:アスベスト、ダイオキシン、アフラトキシン、ベンゼン、ホルムアルデヒド

⑤放射線・紫外線:甲状腺がんや白血病、皮膚がんなどのリスクを上げる

 

この中でも特に、もっとも多岐にわたり、私たちの日常生活に深くかかわってくる「①生活習慣」と、世の中に様々な場所にリスクが潜んでいる「②感染症」の2つが、大きな原因として挙げられます。

今回は、まず「①生活習慣」について解説します。

 

 

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様々な因子の中でも、タバコの影響力の強さはダントツです。

タバコの煙には約4,000種類の化学物質が含まれていて、そのうち200種類以上が有害物質です。ニコチンやタール、一酸化炭素のほか、カドミウムやヒ素、ダイオキシンなども含まれます。そしてタールには約40種類の発がん物質が含まれています。

これだけのものを含むタバコが、健康に悪影響を及ぼさないはずがありません。

実際に、日本ではタバコが原因で年間に約13万人が亡くなっているのです。

死因として「がん」はもちろんのこと、「心臓病」「脳卒中」「肺気腫」「喘息」なども含まれています。

日本人の死亡に関わるリスク因子を比較すると、タバコは血圧を抑えて、堂々の1位となっています。

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タバコと並んで、発がんのリスク因子として影響力の強いものにアルコールがあります。

アルコールは、「アルコール」→「アセトアルデヒド」→「酢酸」の順に体内で代謝されますが、このうち、アルコールとアセトアルデヒドに発がん作用があります。少量であれば速やかに代謝されますが、過度の飲酒で代謝が遅れると、発がんのリスクが上がってしまいます。

その他、運動不足や肥満、糖尿病は、高インスリン血症をきたし、インスリン自体の発がん性によってリスクが上がると考えられています。

また、個々の食事の発がん機序(メカニズム)に関しては不確定な部分もありますが、いずれも疫学的に証明されている事実です。

 

以上のように、そのメカニズムは様々ですが、日々の生活習慣のちょっとした偏りが、結果的に発がんにまで至ってしまうという怖さがあります。

しかしその一方、それが生じるかどうかは個人個人の心がけ次第なのであり、ここに、改善のための大きなチャンスもあるのです。

遺伝子に生じた問題を直接観察したり、直したりすることは現在のところ困難ですが、その直接の原因である生活習慣を改めることは、誰にでも十分に可能です。

つまり、生活習慣を適切に改めることができれば、それだけで将来的な発がんのリスクを下げることができるのです。これを「一次予防」と言います。

がんといえば、早期発見・早期治療(これを「二次予防」と言います)が大切だと盛んに啓発されています。もちろんそれも非常に大切なのですが、そもそもがんの発生自体を予防することができれば、本人にとってはもとより、広い社会全体のなかで、医療経済的にもベストなのは間違いありません。

つまり一次予防、イコール生活習慣の改善こそが、「がん診療」という広大なフィールドにおいて、すべてが始まる起点であり、なおかつ最重要のポイントだと言えるでしょう。

 

(了)

 

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