かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2019.10.15 update.
東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
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公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』・『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著に『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』がある。
日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』
| 人体をつくるメカニズム エピ+ジェネティクス|
医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。
自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。
*ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中
前回、がんが発生するもっとも本質的な原因は「遺伝子の異常」だと解説しました。
特に、
「がん遺伝子」というアクセルが戻らなくなってがん化する場合と、
「がん抑制遺伝子」というブレーキが壊れてがん化する場合があります。
ただし、がん遺伝子とがん抑制遺伝子が発がんにおいて大きな役割を果たしているのは間違いありませんが、それらの1つでも異常が生じれば即がん化するかというと、必ずしもそういうわけではありません。
一般的には、細胞に複数個の遺伝子異常(変異)が蓄積することによって、徐々に悪性度が高まり、その結果がん化し、さらには他の臓器へ転移する能力を獲得していく…と考えられています。これを、「多段階発がん」と呼びます * 。
* ただし網膜芽細胞腫のRb遺伝子など、1つの異常で発症するがんもいくつかある。
エピジェネティクスという言葉は、「ジェネティクス」(遺伝学)の前に、接頭辞である「エピ」が付いています。
「エピ」には、「上に」とか「外に」という意味があります。たとえば、物語の本筋の外で語られる展開を、「エピローグ」と呼んだりしますね。
ここでは「遺伝子の配列の外、もしくは違う次元で遺伝子に影響を与えるもの」という意味になります。
エピジェネティクスにはマンガで示したスイッチのON、OFF以外にもさまざまなしくみがありますが、すべて重要な役割を持っています。
たとえば人間の細胞は、どれも同じ遺伝子情報を持っています。しかし細胞は分化していくことにより、脳や心臓、肺、消化管、泌尿器、筋肉、骨、血液などさまざまな臓器を構成していきます。同じ遺伝情報を持っているのに、同じ細胞にはならないのです。
この多様性は、各細胞の中で、スイッチのONとOFFを様々に組み合わせることによって、実現されているのです。
人間の身体というのは、非常に複雑かつ精緻に…奇跡的なまでにコントロールされているのです。
しかし、時にそのシステムが異常をきたし、発がんに関与することがあるのです。
そのしくみ(メカニズム)を解明することができるのか?
そして治療につなげることができるのか?
科学が進めば進むほど、新しい問題も目の前に現れるのです。
[医学書院の《がん看護実践ガイド》シリーズ]
超高齢社会に向けたこれからのがん看護に求められる知識と技術がここに
がん治療の進歩と罹患者の増加に伴い、がんとともに生きる患者が急速に増える一方、在院日数短縮化が進み、病院と在宅療養と介護サービスの適切な活用が必須となりつつある。がん患者の特性を踏まえた症状コントロールや心理的ケア、意思決定支援、限られた社会資源の調整といった「療養支援」を、治療の場と時期を問わず提供できることが病棟や外来の看護師に求められている。本書ではそれらの知識と技術を具体的に解説する。
がんサバイバーの自立を支えるために看護師が行うがんリハビリテーションを解説
がん、治療とともに日常生活を送るがんサバイバーが自立した生活を送るためのリハビリテーションが求められている。本書では、がんの治療期の患者に焦点をあて、がんリハビリテーションを実践するうえで基盤となる知識、技術について解説し、特に看護師が行う実践について取りあげている。看護師がベッドサイドなどで行うリハビリテーションや退院後の生活を想定したセルフケア指導について解説した1冊。
がん患者のエマージェンシーの早期発見と迅速な対応のために
がん患者のエマージェンシーには早期発見、迅速な対応が求められる。そのため、がんやがん治療について理解するとともに、エマージェンシーの徴候、見え方を知っておくことが重要である。本書では、症例を豊富に提示し、病棟・外来でエマージェンシーがどのように見えるのか、求められる対応、必要な知識を解説し、また外来化学療法を受ける患者の帰宅後のエマージェンシーへの対応(電話サポート)も取りあげている。