第7回 がん遺伝子とがん抑制遺伝子

第7回 がん遺伝子とがん抑制遺伝子

2019.10.01 update.

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近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
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公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著に『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』がある。
日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』

 

遺伝子の異常が体内にがん細胞をつくる

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています(第1回第2回第3回第4回第5回第6回)。

 

テーマ●がんが体内に生じる原因

 

本連載ではここまでの回で、がんがどのような特徴を持っていて、どのような作用で人を死に至らせるかを解説しました⓪

 

がんは、

①無制限に増殖し、

②リンパ管や血管を通じて他の臓器に転移し、

③正常細胞が摂るべき栄養を奪って体を衰弱させます。

そして、そんながんの罹患率や死亡率がどれだけ高いか、また社会においてどれだけ大きな影響を及ぼしているかも見ていきました。

 

では、そのようながんが体に生じる原因は何なのでしょうか?

結論から言うと、実はがん細胞が生じるのは、その細胞に「遺伝子の異常」があるからなのです。

ここで、「え、がんの原因はタバコや感染症じゃないの?」と思った人もいるかもしれません。

たしかにタバコやヘリコバクター・ピロリ(「ピロリ菌」は通称・俗称、肝炎ウイルスといったリスク因子が、がんの発生に大きな影響を与えることがわかっています。

しかしそれらのリスク因子は、人体に暴露された結果、遺伝子に異常を引き起こすから発がんするのです。

 

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がん遺伝子には、「k-ras」「myc」「src」などがあります。

ここで大事な注意点です。これらは「がん遺伝子」と呼ばれていますが、

けっして「がんを増やすために存在する遺伝子」というわけではありません

 

そもそもは細胞を増殖させるという大切な役目があり、それに異常が生じた場合にがんの原因になりうる、というだけです。

そのため、がん遺伝子のことを「がん原遺伝子」と呼ぶこともあります

(ただし本連載では、混乱を避けて「がん遺伝子」で統一します)

 

次に、がん抑制遺伝子には、「Rb」「MLH1」「p53」などがあります。

それぞれ、違った方法でがん化を防いでいることがわかっています。

 

①細胞の増殖を抑制(Rb

②遺伝子に生じた異常を修復(MLH1

③細胞にアポトーシス* を起こす(p53

 

* アポトーシス:生体を適切な状態に管理し、生存に有利にするために、自発的に細胞を死に至らせること(突発的な外傷などで細胞が死ぬことは「ネクローシス」と呼ぶ。

 

オタマジャクシの尻尾がカエルになる過程で無くなるのもアポトーシス。

p53は遺伝子に変異を起こした細胞を、がん化する前に排除する役目があります。

細胞が簡単にがん化しないようにするということは、人体にとって極めて大切なことです。ですので、そのセーフティーネットが何重にも張り巡らされているのです。

 

そして、この中でも特にp53は、さまざまながんの発生に深くかかわっている重要な遺伝子なので、医療者は覚えておいたほうがよいでしょう。

 

(了・次回へ続く

 

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