第1回 「レビー小体病」って?

第1回 「レビー小体病」って?

2017.1.12 update.

樋口直美(ひぐち・なおみ) イメージ

樋口直美(ひぐち・なおみ)

1962年生まれ。50歳でレビー小体型認知症と診断された。
2015年に上梓した『私の脳で起こったこと――レビー小体型認知症からの復活』が、日本医学ジャーナリスト協会賞を受賞。
思考力自体には問題はないが、空間認知などさまざまな脳機能障害のほか、幻視、自律神経障害などがある。
自分で手作りした下記サイトには講演動画や原稿や記事を集めてありますので、どうぞ。
https://peraichi.com/landing_pages/view/naomi

 

みなさん、はじめまして。レビー小体病の樋口直美です。

 

2013年6月に50歳でレビー小体型認知症の診断を受け、抗認知症薬治療を続けながら、2015年から主に専門職の方向けの講演や執筆活動をしています。

最近では、(株)シルバーウッドの下河原忠道さんの社会活動である「VR(バーチャルリアリティー)認知症」プロジェクト*2の「レビー小体病幻視版」の制作にかかわり、私や病気仲間の見る幻視を正確に再現しています。

 

レビ-小体病VR.jpegVR認知症体験会にて

 

2015年夏に『私の脳で起こったこと――レビー小体型認知症からの復活』(ブックマン社)を上梓したことをきっかけに世界が開けました。 

 

私には、この病気に出やすい運動障害(パーキンソン症状)もなく、見た目には異常がわかりません。しばしば誤解されますが、私にもいろいろな困りごと(症状、障害)は、あります。ただそのなかには、医療者にすらよく知られていないものもあり、少々説明したくらいでは、私が困っていることは伝わりません。

 

私自身、自分にどういう障害があるのかは、“何かができなかったとき”に初めて気づくことです。そのたびに驚き、「これは一体どういう仕組みか!」と考え、文献など漁り……、まぁ、おもしろがってもいます。できなくなって初めて、脳が年中無休かつ無意識にしてきた仕事に気づき、感心したり、感動したりするのです。

 

そんな私の困りごとについて、これから書かせていただくことになりました。きっと高次脳機能障害や発達障害スペクトラム、その他の脳の病気や障害をもつ方々の困りごとと似ていたり、重なる部分が出てくると思います。

読者のみなさまには、脳の働きや世界の認識の仕方などを、私と一緒に探索していただけたらとてもうれしく思います。

 

樋口本文(蜘蛛の糸に水滴)@かんかん!.jpg

 

連載を始める前に、少しだけ病名のことを説明させてください。

「レビー小体型認知症」と「レビー小体病」の違い。みなさんは、ご存知でしょうか?

 

2015年にNHKの認知症特番に出演したときも、ヨミドクターに連載しているコラムでも、「レビー小体病当事者」という肩書きは、却下されました。

「レビー小体病では、誰もわかりません。肩書きは、レビー小体型“認知症”当事者にしていただきます」ときっぱり。

 

私自身が実際につけられた診断名は、「レビー小体型認知症」です。そのお陰で、抗認知症薬治療を受けられることになり、薬の効果は私には大きかったのです。

 

ではなぜここで「レビー小体病」と名乗るかといえば、ひとつには、一般にイメージされている「認知症」とは、あまりにも違うからです。

それゆえに誤診が多いという大きな問題もあり、この病気の発見者である小阪憲司先生(医師、横浜市立大学名誉教授)ご自身が、病名から“認知症”を外して、より広い概念をもつ「レビー小体病」とすることを提唱されています。

 

「レビー小体病」という病名と概念は、病態の幅が広すぎるためか医学界ではまだ共通認識が得られずにいますが、認知症専門医のあいだでは、広がりつつあります。

 

樋口本文(蜘蛛の糸に水滴)@かんかん!.jpgのサムネール画像

 

私には短期記憶障害はなく、思考力にも変化はありません。そのために「あなたのどこが認知症だ」と一部医療者から言われてきました。医療関係者でも何でもない、ただの患者としては、たいへん戸惑い、悩み、そのおかげで病状を悪化させた時期もありました。

 

でも、私の脳や体には、たしかにいろいろとヘンな障害があります。それらは、私自身も不思議で、おもしろく、観察しがいのあるものです。

たとえば、時間の感覚を障害されると、どんなことになるか、皆さんは想像ができるでしょうか?

あるいはもっと身近なことなら、嗅覚が障害されたとき、どんな生活になり、どんなことを感じると思いますか?

 

次回から、そんな一つひとつの障害について、みなさんが納得されるように丁寧に書いていきたいと思っています。

 

では、いざ、私の脳の中へ!(次回は明日[1月13日]更新予定です)

 

 

レビー小体病は、レビー小体(たんぱく質の塊)の蓄積によって発症する病気の総称です。レビー小体型認知症、パーキンソン病、純粋自律神経不全症などを含みます。認知症症状のない患者も含んでいます。

レビー小体型認知症には、アルツハイマー病を合併した「通常型」(高齢者発症に多い)と合併のない「純粋型」(若年発症に多い)があります。純粋型では、認知症症状が出る前に幻視や自律神経障害など多様な症状が出ますが、認知症がないために誤診されるという問題があります。「もし認知症症状が出る前に診断され、治療を始めれば、認知症に進行しない可能性もある」と小阪憲司先生は、言われています。

長年、「進行が早く、予後の悪い病気」と言われてきましたが、ここ数年、薬剤過敏性に配慮した適切な治療とケアで、よい状態を長く保つ方が増えてきていることが報告されています。

 

 「誤作動する脳――レビー小体病の当事者研究」第1回了) 

第2回はこちら→

 

 

 

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コメント

母親(80代後半)がレビー小体型認知症と診断され、幻覚でいろいろ大変だった経験があります。今ボランティアで行っている所に記憶に障碍があったり、嗅覚に障碍がある利用者が居るので、いろいろ知りたいと思って読み始めました。記事に期待します。

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